第5章 夏の思い出
「心配した」
「ごめんなさい」
「ハァもぉ・・・・優仁がケガすんの・・・見るのきちぃ・・・」
「ッ」
「大きい声だしてごめんッ、けど、優仁が悪い」
「うんッ、ごめんなさい」
「もっと自分大事にしてくれッ、頼むから」
「うん」
こちらを見つめる視線が優しい。
言葉ではなくその目が本気で心配していたと語っているのが伝わってたまらなくなる。
こんなにこの人は優しい。
ケガしたのがまるで自分の事のように感じてるみたい。
胸が苦しい。
「泣くなよ、ごめんって」
「ううんッ・・・僕がッ・・・ゴメンッ」
「うん」
ポンポンと撫でられるその温もりに余計涙が出る。
どうしよう、ダメだってわかってるのに、そんな風にされると止まらなくなるんだ。
ドンドン好きになる。
苦しい。
ダメなのに許されないのに想いが止まらない。
そっとその肩に額を当てて泣けば苦笑しながらもまたポンポンと背中を撫でてくれた。
貴方の事を好きな気持ち。
止められない事を許してください。
思う事を許して。
頬の痛みと口の中にひろがる鉄の味を感じながら、私は暖かいその温もりの中で暫く涙を止める事が出来なかった。