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夢恋

第1章 始まり



 覚えているのは昨晩は激しい雨が降っていたと言う事だけ。

 急な欠員と週末の居酒屋と言う最悪な条件が揃った結果、帰宅時間は深夜3時を回っていた。

 朝早くから受けた講義、夕方までみっちり勉強してから向かったバイト。

 時間になってもこないバイト、客が増えて忙しくなる店内。
 本当なら11時に上がる予定が店長に泣きつかれて仕方なくバイト時間を延長した。

 クタクタになりながら店を出れば突然のゲリラ豪雨。

 傘なんて意味をなさない程、雨で視界が消えていた。

 (最悪・・・・)


そう思って真夜中の土砂降りの雨の中を走った。

 覚えているのはそこまでだ。
 その先が何故かまったく思い出せない。

 ゆっくり身体を起こせばズキズキと痛む米神。

 「痛ッ・・・・え?」

 ズキズキとする痛みにそっと米神に手を当てて呻きドキッとした。
 確かに今自分が思って発したモノは言葉になった。
 だけど、驚いたのはそこじゃない。

 「あー・・・・は?何?え?」


 嫌な汗をかきながらもう一度声を発して更に焦る。
 思わず喉に手を当てる。

 酷くなる頭痛。
 だけどそんな痛みより、心臓の音が五月蝿い。
 ドクドクと激しく鳴る心音。

 ジワッと汗が出る。
 恐る恐ると周囲を見て体がカタカタと震え始めた。

 「・・・・ココ、どこ?」

 見覚えのない部屋。
 壁にはJリーグ選手のポスターやポケモンのカレンダー。
 机の上には黒のランドセル。

 ボールなどがあるその部屋は自分の部屋とはまったく違った。

 子供部屋、しかも、男の子の部屋である。

 どうしてそんな部屋に自分が?
 そう思い寝ていたベットから降りてタンスに付いていた前面鏡の前に立った時思わず悲鳴を上げる。

 「きゃああああああああああッ!?」

 甲高い悲鳴。
 だけどそれは、自分の声ではない。
 鏡に写っていたのはどうみても十代、小学生の子供の姿。

 恐怖で後退りバランスを崩して座り込む。

 鏡には同じ体制でこちらを驚愕の顔で見つめる子供の姿。

 「何よコレ・・・・何の冗談?」

 悪い夢だ、そう思い震える手で自分の頬を抓る。
 感じる痛みに更に身体が震える。
 触れる感覚と温もり。

 どうしてこんな事になったのか、まったく理解出来ないまま二度目の人生は問答無用にスタートした。
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