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【YOI男主】僕のスーパーヒーロー【勇利&ユーリ】

第3章 不安と焦りとパンドラの匣


「入院って…サユリ、どっか具合悪ぃのか!?」
『以前から予定していた膝の内視鏡手術を受けただけで、心配は要らない。経過も良好で、遅くとも月末には退院出来るらしい。入院中電話来るのが鬱陶しいからって、俺にスマホを押し付けやがったんだ』
宥めるような藤枝の声を聞いたユーリは、純に大事ないのが判ると安堵の息を吐いた。
『現役中、俺が何を言っても聞かなかった純が、ロシアから帰国して手術を受けるつってきた時は、本当に驚いたぜ。君のお蔭だな』
「…俺の?」
『ああ。ロシアのアイスショーでの君の演技に触発されたらしい。「自分が辞めたのは競技だけ。やっぱりスケーターとして滑れる内は滑りたい」ってな。正直俺としては、もっと早く決心してくれりゃ今頃まだ…とも思うが、きっとこれも、なるべくしてなったという事なんだろうな』
苦笑交じりの藤枝の言葉を、ユーリは感慨深げに聞き入る。
『君は、日本語も話すんだな』
「…ああ。こっちに住んでるサユリの知り合いに教わってるんだ。まだ、全然上手く話せねぇけど」
『そんな事はない。何であろうと、学ぶというのは良い事だ。人生に無駄なツモは1つもないのと同じでな』
今ひとつ要領を得ない藤枝の応えだが、自分を励ましている事は判ったので「どうも」と短く謝辞を述べた。
『わざわざ電話をくれたのに、悪かったな。純は病院にタブレットを持ち込んでいるから、メールの類なら送る事が出来るぞ?』
藤枝にそう言われたユーリは、暫し頭の中で考えを巡らせていたが、
「…いや、いい。急ぎの用じゃねぇし、サユリが退院した頃にでもまた連絡する。お大事にってだけ伝えてくれ」
『ああ、必ず』
通話を切ったユーリは、手の中でスマホを握り込む。
「サユリが、あの時の俺の演技を観てスケーターとしてもやる気になった…なら、俺もこんなトコでウジウジしてらんねぇ!」
ベッドから下りたユーリは、練習用具一式入ったリュックを背負うと、勢い良く部屋を飛び出した。

個室を良い事に消灯後も夜更かしをしていた純の元に、藤枝からメッセージが届く。
『彼から連絡が来た。本当に良かったのか?』
そっけない文面だが、純は眉を苦悶の形に顰めながら「競技者やない僕では、今のユリオくんを甘やかしてしまうから」と返信した。
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