第2章 変わった出来事
どれ位、電車は走っただろうか?
流れるお気に入りの曲が何曲も過ぎていくのをぼんやりと感じつつ、及川はまだ夢の現実の狭間にいたーーー・・・
「どんな歌を聴いてるの・・・?」
と、誰が話しかけてきた気がした。
ハッとして、及川はぱっちりと目を開けた。
丁度電車は駅で停車している。
重力のままに首を下げていたため、少し痛い。
及川は顔を上げ、すぐに停車している駅名を確認し、自分が降りる駅ではない事を確認し、ほっと胸をなで下ろす。
そして、視線を前方に向けると、
いつの間に乗ってきていたのだろう、この車両は及川以外無人では無くなっていた・・・
及川の丁度向かいの席に、脚を組む少女が座っていた。
黒く、美しい髪は、胸元で切りそろえていて、ゆるくウェーブがかかっている。
長いまつげに縁取られる大きな瞳は、白い肌によく映える。
少し気だるそうに首を傾げる姿が、また彼女を少し魅力的に映している。
さっきの声は彼女が・・・・・・?
頭の中に、直接響いてくるような声だった。
(そんな訳ないか・・・・・・)
見ず知らずの彼女が、話しかけてくるはずない。常識的に考えて。
だって既に、彼女は自分に興味なんて・・・・・・
(ん・・・・・・?)
イヤフォンをつけっぱなしにした及川は、目の前の少女が、じっと自分を見つめているような気がしてなからなかった。
いや、気のせいではない。
彼女は、自分を見ている。それは、もう、まじまじと。
見透かすように、穴が開くくらいの視線を感じた。
(俺、何か変!?)
及川は自身の格好をよく見る。緩められたマフラーも、厚手のジャージも、リュックも、よく見る体育系の男子学生がする格好であるが・・・・・・
未だに視線の端っこの少女は、じっと及川の方を見ている。