第2章 変わった出来事
《間もなく終電電車が発車いたします。駆け込み乗車は御遠慮下さい》
プルルルルル・・・
アナウンスを聞きながら、缶コーヒーを片手に、
及川はホームの階段を駆け下り、終電電車に滑り込んだ。
ほんの数秒後、プシューと言う音と共に電車のドアが閉まる。
(危なかった〜)
及川はほっと息をつき、巻いていたスカイブルーのマフラーを少し緩める。
そして端の席に腰を下ろし、足の間に背負っていたリュックを下ろす。
及川を乗せた電車は緩やかに動き出す。
今日は練習後にだらだらと部室で騒いだな、と、終電になった理由を・・・・・・しょうもない事で馬鹿みたいに笑いあった今日の出来事を思い出し、吹き出しそうになる。
終電になることは稀にあるが、今日のように改札からダッシュしたのは初めてだった。
タタン・・・タタン・・・
規則的なリズムを刻む電車は、終電という事もあり、及川の乗った車両は彼以外無人だった。
静かな車内、暖かすぎるくらいの暖房。
疲れた体を、眠気を誘うにはもってこいの環境が揃い、及川は落ちそうになる瞼を開き、リュックからイヤフォンを取り出して両耳に付ける。
スマホから最近のお気に入りの曲を選曲する。
それが導入となり、及川は目を閉じて鳴り響く音楽と共にゆっくりと睡魔に身を任せていった・・・・・・
ここまでも、及川の日常の一部だった。
違うのは、
ここから・・・・・・