第2章 はじめましてと噛み合わない会話
セブルス君や、日本人的に“善処します”は“無理です”って事なんだけど、君はイギリス人だから私は信じるよ?
高そうなブローチをローブのポケットに押し込まれて、ノクターン横丁に迷い込んだら、ソレを“ローブの下”に付けるんだって。見えないじゃんね。
ダイアゴン横丁で迷子になったら、カフェテラスのあるお店で待ってる事。どちらにせよ路地裏には絶対に行くなと念を押されて漸く暖炉に足を踏み入れる。
フルーパウダーを一握り。深呼吸をして、準備は整った。
「ダイアゴンよこ、ちっ…くしょい!……あ。」
事前の深呼吸で細い埃やススが鼻につき、自らの足下に投げたフルーパウダーが舞い上がると、遂に堪えきれず。盛大なくしゃみを残した部屋で、セブルスはただただ頭を抱えて居た。
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視界が揺れる。揺れると言うかまわる。
気付いた時には暖炉からペイッと吐き出され、床に大きく体を叩き付けて、痛みに悶えていた。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいったい!!!!)
のた打ち回ってやりたい衝動を必死に抑えていたところ、抱き込んでいた左肩に更なる衝撃が襲う。
「ふんっ、穢らわしい!こんな所で邪魔だ!」
「ぐあっ、……ちょ、おいこら糞ガキ…」
通路を塞いでいたのは悪かったけどな、怪我人相手に心配どころか足蹴にするたァ、どういう了見だ。あ゙ぁ゙?
ゾンビよろしく少年の長い足をガシリと捕まえると、小さな悲鳴が聞こえた気がしたが何分私は、大層ご立腹なのだ。許しはしない。
「ひっ」
「怪我人相手に足蹴にとは、どういう教育受けてんだてめぇ。親はどこだ、あ!?」
せっかく纏めた髪も解け、顔にかかる。邪魔で邪魔で、必死に視界を確保しながらガキに親の所在を聞き出していた処、漸く視界が開けて絶句。
「ドラコ・マルフォイ?」
「ぼ、僕を知っているのか!?…ち、父上に言い付けるぞ!」
「ルシウス・マルフォイ?」
「そうだっ、手を離せ!」
「……別に良いけどさ。今回の事話したら、たぶん普通にドラコが怒られるよ?ルシウスさんは、賢い人よ。」
「ぐ…」
先程までの勢いは何処にと思うぐらいには、随分と大人しくなった。…ドラコは決して馬鹿では無い。分かっている筈だ。
「ドラコ、何をしている。」
