第2章 はじめましてと噛み合わない会話
バタバタとお手洗に走り、どうにか無事に済ませた後。そう言えば…と、事の次第を思い出して、若干の気まずさを残したまま部屋へ戻る。案の定蝙蝠はベッドに腰掛け、俯いたまま。
「あー、死喰い人と間違えちゃった?」
小さく吐いた息が聞こえない様に。セブルスが思い詰めない様にと、敢えて笑って声を掛ける。
「…っ、…すまない……」
「…まだ(出逢って)3日なのに、謝ってばっかだね。」
「…すまない。」
顔は上げない。此方に背は向けたまま。理由も口にしない。…何だか子供と話してる気分だ。
「あーのねぇっ。昨日も言ったでしょ?
僅かではあるけど、貴方の事も私は知ってる。ハリーが今年入学するなら、ヴォルデモートが敗れて既に10年…?
貴方の立場なら、それこそ…。長期休暇の今が1番、気が休まらない時期でしょう。」
「っ、何を…」
あぁ、漸くこっち向いた。馬鹿セブルス。あんたそれでも、閉心術の達人?開心術なんか使わなくったって、その顔見れば分かっちゃうよ。
「アズカバンを逃れた死喰い人に襲われるかもしれない。死喰い人に大切な人を殺された憎しみを、自分にぶつけられる可能性だってある。
ずっと1人で暮らしてたんでしょう。ホグワーツでだって、何が起こるか分からない。
…急に私が現れて、心が追い付かないのは…貴方も同じ筈。」
目が合う。髪の色と同じ黒い瞳が私の視線とぶつかると、どこか満たされる様な感覚に陥る。何なのだろうこれは。
「私の事は気にしなくていい。大丈夫だから。それより、良く眠れた?ベッド、半分貸してくれてありがとうねっ」
ベッドに膝立ちしたまま、腕を伸ばしてセブルスの髪を撫でる。予想外に何も言われなかったので、数回繰り返してから2人で身支度を整える事にした。
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「あ。ねぇ、セブルス。此方のガーゼって取っちゃだめなの?」
私の服と言えば、この世界に落ちた時着ていた物と、昨日ダンブルドアとの面談用に用意されていたワンピース。寝巻きにセブルスのYシャツ。下着も服も全くと言っていい程、足りない。
今日はそれを買い足しに行くのだが、試着する時に絶対困る。このガーゼ。
「足首の完治にもう2日は掛かる。それが治るまでは他は大した治療が出来ない。我慢しろ。」
