第1章 小さな村のサーカス
sideみこと
暖かい、誰かが僕を呼んでいる。
誰だろう?暖かな声、落ち着く声。
それにここはとても落ち着く。
冷たい牢の中とは大違いだ。
「..........ちゃん!」
神様はいるんだね、僕の願いを───
「...お...みことちゃん!!」
叶えてくれた───────
「起きて!みことちゃん!」
『ん......』
身をよじらせようとするが誰かにガッチリと
ホールドされてるらしく、なかなか動けない。
「っ!良かった!起きたのね!!」
僕を抱きかかえているであろう人は良かったと
より一層強く抱きしめる。
『だ..........れ?』
人と話した事が無く掠れた声で聞くと
「シルビアよ、旅芸人って知ってるかしら?」
『......(フルフル』
「そうよね、人を笑顔にするお仕事よ☆」
『笑顔に......すご、いね』
「っ!!」その人は驚いた顔で僕を見て、
その後、ありがとうと優しく笑う。
「みことちゃん、今暖かいものを......」
『..........どうして?』
「?」
『どうして、僕の名前』
少し不思議に思っていたのだ。
教えても、会ったことも無い人に僕の名前が
知られている、それも"忌み子"では無く...
「ある男の子がね、教えてくれたの」
『男の..........子?』
「えぇ、あっ!アタシとした事が!名前聞くの
忘れちゃったわ!」
あらいけない!と慌て始めるその人はとても
面白く感じた。
『貴方の名前、教えて』
「あ、言ってなかったわね、アタシは」
──────「シルビアって言うの」───────
僕を冷たい牢の中から出してくれたのは
シルビアだった。