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【APH】本田菊夢 短~中編集

第20章 (日+黒日)敗者の道 (捏造戦国)



「………兄上」

私の肩に、優しく触れられる別の手。
すぐにわかった。菊の手だ。
私を抱きしめている男は両手で私を捕らえているし、そうでないにしたって触れ方が優しすぎる。

「何です、菊」

「…………」

「いやに反抗的な目付きだ。どうしました、お前らしくもない」

「彼女を抱くのはやめて頂けませんか」

「…面白い事を言う」

くつくつと喉を鳴らした男は私の向きを変え、私は菊と向かい合った。
背中から抱き付く男は、私の首に触れる。喉をなぞる。
何をされるかと怯え身体を硬くする私の顎に触れ捉えると、ぐいと首を傾けおもむろに口付けた。

「っ…!」

唇に噛みつきたい衝動を抑える。菊が息を呑んだのがわかった。
我慢、我慢しろ。彼は一閃で私を殺せる。生きたいのなら媚びて気に入られろ。
拳を握る。

がち、と歯をぶつけ歯列をなぞり唇を離した男は、指の腹で私の息を撫で、言葉を発しようとした私の口内に指を押し込んできた。

「んぐ、ぅ…」

嫌悪感の中、気付けば眉をひそめた菊の顔。刺すような視線。


「…兄上」

牽制するように菊。
私の口内で指を遊ばせながら、男は可笑しそうに肩を震わせた。

「惚れたのですか。今まで忠実に私の相手となる女を選び渡し続けてきたお前が」

「いけませんか」

「面白い」

「それ以上なさるようでしたら兄上とて容赦はしませんが」

「………」

指が引き抜かれる。
ああ、背後のこの男は今とても楽しそうな顔をしているのだろう。
私を見つめる菊の目は優しく、労るように触れる手にすがりつきたくなった。
けれど、黒い男の引力は凄まじく。

「この女は私のものだ」

「兄上はそろそろ我慢を覚えるべきです」

身体が二つに裂けそうだと思った。



2014/
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