第1章 伝えておけばよかった《柴田勝家》
その日から彼は私と話をしていても上の空
廊下で立ち止まっていて、どこを見ているのかと思えばお市様
お市様、私はあなたが憎かった
必死に泣きたい心を隠して、好きだよって言いたいのを押し殺して笑顔を保ってそばにいた、つもりだった
「柴田勝家!謀反!!!」
月の綺麗な夜に響いた声だった
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「はるな」
『明智様、どうかなさいましたか?』
白銀の長い髪をゆらゆら揺らして声をかけてきたのは織田信長の手足、明智光秀
明智「勝家の姿が見えないのです。なにか知りませんか?」
『さぁ・・・?どこかに怪談話でも探しに行っているのでは?』
明智「いいえそれは有り得ません。彼は謀反を起こしてから怪談話など探しに行っていませんから」
『そう、ですか・・・』
明智「あたなはよく勝家の隣にいるので何か知っているかと思ったのですがね。
謀反といえば・・・勝家の謀反の後ろには足利、将軍がいたそうですよ。将軍は今京都にいますから、勝家がなにかしていなければいいのですが。」
クククッと不気味な笑いを残して明智様は去っていった
謀反の影に将軍?
どうして?なんで将軍が?
『か、勝家・・・勝家っっ!!!!』
私は無我夢中で京都へ走った
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荒れ果てた城跡
『これ、全部、勝家がやった・・・の?』
階段を上って、上って、やっとついた天守閣
将軍と
倒れているのは・・・
『か、かつ・・・勝家・・・?勝家!!!』
「其の方は」
『あなたが、勝家を・・・権六を・・・殺ったの』
「いかにも。彼にはがっかりしたよ」
そのまま将軍は去っていった
『権六・・・権六っ』
なんて綺麗な死に顔なのだろう
『好き、好きだよっ権六っ・・・ふっ・・・うぅっ・・・』
『おいて、いかないでよ・・・!』
息をしない、冷えていく亡骸を抱きしめて呟いても反応をしてくれない
あぁ、こんなことになるのなら
《伝えておけばよかった》
End