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外科医・牛島若利

第4章 前夜


大事故から2日後、明日は木兎チームの大きなオペが控えている。
大けがをした天童は、意識も回復し、まだ動けはしないもののひとまずは元気な様子だ。
仕事を終えた羽音はフルーツのジュースをいくつか買って天童の部屋を訪れる。

「あっ、羽音ちゃ~ん。お見舞いに来てくれたの?」
「天童さん、元気そうで良かったです」

まだ食事はとれないと牛島に聞いていた。多少は腹の傷も痛むのだろう、天童は腹部を擦りながら陽気に挨拶をして身体を起こす。

「無理しないでくださいね」
「ありがと」

持ってきた飲み物を冷蔵庫に入れていると病室の扉がノックされた。大きな機材を押しながら入ってきたのは赤葦だ。

「あっ」

羽音の姿を見て軽く会釈した赤葦は、天童の寝ているベッドの横に機材をセットした。

「わぉ、最新型。高かったんじゃないのこれ~」
「まぁ、俺が買ったわけじゃないし」
「よく許可降りたじゃん」
「木兎先生の腕ですかね」

どうやら赤葦が運んできたのは、最新型の移動式エコー機材。画像班が喉から手が出るほど欲しい代物らしいが、木兎の手腕で心臓班に買い与えられてと言う話だ。
確かに機材の良しあしでも治療や診断に影響が出るのだから、良いものは良いと牛島も言っていた。

いつもなら険悪な二人がなんとなく同僚として一緒の画像を見ている。
初めは赤葦がプローブを動かしていたのに、天童が自分で自分の腹を見だした時には思わず吹き出してしまった。
自分もオペが好きだが、たぶんこの人たちも画像が大好きなのだろうと思ったのだった。
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