第4章 迷夢…
二宮君に誘われるまま着いた先は、所謂”盛り場”と言われる場所で…
夕暮れ時ということもあってか、通りのあちらこちらにネオンライトがチカチカと瞬いていて、その下には、客引き…だろうか…
道行く人に声をかけては、店の中へと引き込んでいる。
どれだけ辺りを見回してみても、僕らのように学生服を着ている者など、どこにもいない。
寧ろ、こんな場所を僕らのような学生が、しかもこんな時間に歩いていること自体、おかしいのかもしれない。
「あ、あの、二宮君!」
僕は慣れた足取りで前を歩く二宮くんの背中に声をかけた。
「僕、やっぱり…」
でも二宮くんはその歩を止めることなく、首だけで僕を振り返ると、
「今更帰る、なんて言わないよな?」
と、口元を少しだけ上げて笑った。
僕はその瞬間、勢いとはいえ、二宮君の誘いに乗ってしまったことを、酷く後悔した。
こんな所をもし誰かに見られでもしたら…
学校の先生だっているかもしれない…
それに父様の会社の人だって…
もしこんなことが分かったら…
父様の耳に入ったら、僕は…
僕は学生帽を目深に被り直し、顔を下に向けると、周囲の目から逃れるように足早に歩きだした。