第4章 迷夢…
学友と過ごす時間は、それなりに楽しかった。
でもそれだけ…
一人になれば、どれだけ抗おうと、否応なしに智子のことが脳裏をチラついては、僕の胸は傷んだ。
そんなある日、帰り支度をしていた僕の肩を、クラスメートの二宮君が叩いた。
「何か?」
「今日、これから時間あるかな? 付き合って欲しい所があるんだ」
特に親しくも無ければ、会話すらしたことのない相手からの突然の誘いに、僕はどう答えて良いものか、頭を巡らせた。
彼については、あまり良い噂を耳にしたことがなかった。
夜な夜な繁華街をふらついては、遊び歩いているとか…
売春宿に出入りしているのを見かけた、なんて噂を耳にしたことだってある。
困り果てた僕は、すぐ側にいた同じくクラスメートの相葉君を、縋るように見つめた。
人の良い相葉君なら、何かしら助け舟を出してくれる…、そう思ったからだ。
だけど僕の思いとは裏腹に、相葉君は小さく首を横に振っただけで、逃げるように鞄を手に教室から出て言ってしまった。
「どうする? 無理なら他を当たるけど?」
いよいよ返事に困った僕は、机の上に残っていた教本を乱暴に鞄に突っ込んで、一つ息を吐いた。
運転手には、学友の家で勉強すると言って、先に帰って貰えばいいし、そのように母様に伝えて貰えば済む。
それに何より、智子のことを考えなくて済む…
そう思ったら、僕の首は自然と上下に動いていて…
「よし、決定だな」
気付けば、二宮君の後ろを、とぼとぼと着いて歩いていた。