• テキストサイズ

愛玩人形【気象系BL】

第3章 傷…


一変してしまった空気に、それまで上機嫌だった父様の顔が険しくなる。

僕は居たたまれなさを感じて、隣に座る智子の手を握った。

智子は驚く様子もなく、僕の手を握り返すと、何かを訴えるかのような目で僕を見た。

今にも泣き出しそうな、寂しげな目…

あんなにも潤との結婚を夢見てはしゃいでいたのに、今はもう智子の顔には笑みすらない。

僕が母様に意見なんて求めなければ、智子にこんな顔をさせることはなかったのに…

ごめん…、智子…
僕を許して…

僕は握っていた智子の手をそっと解いた。

その時、食堂の扉が開き、照が深々と頭を下げた。

「お嬢様、そろそろお休みのお時間で御座いますよ」

「あら、もうそんな時間なの?」

照に言われて、思い出したように智子が壁の時計を見上げる。

僕も智子の視線を追うように、壁の時計に視線を向けると、時刻は当に九時を大きく過ぎていて…

いつもなら、智子はとっくに床に就いている時間だった。

「本当だ…。智子、もう休まないと…」

「いやよ…。だって智子まだ眠くないもの…」

珍しく智子が駄々を捏ねる。

きっと父様がいるからだ。

父様の前では、智子が少々我儘を言ったところで、誰一人咎める者はいないから…

でも…

「駄目だよ、智子。ほら、照の顔を見てご覧? 智子が駄々を捏ねるから、とても困った顔をしているよ?」

僕は智子の肩を叩きながら、こっそりと照に向かって合図を送った。
/ 263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp