第3章 【武田軍】刃傷横恋慕帖【高坂昌信/内藤昌豊】
薬草の採集を手伝いたいと、珍しく瀬那ちゃんと二人での外出をすることになった道中。
急に、聞きたいことがあるというから、なにかと思えば、僕が女の子に囲まれて大変じゃないか?という、女の子にはあまりされたことのない心配を含んだ質問だった。
瀬那ちゃんは、今まで出会った女の子たちとは違う。
勿論、神牙の世界の外から来たのだから、違うのは当たり前なのかもしれないけれど、女性であることには変わりないはずなのに、なんだか勝手が違うんだよね。
まず、人を容姿だけで選り好みすることがない。
多くの女の子たちが怖がって近づかない、あの信春さんとも物怖じする様子はなくて普通に接しているし、最近では一緒に小鳥に餌やりなんかを楽しそうにしている。
それに、女慣れしていない昌景が、邪険な扱いをしたり、つっけんどんな態度をとったりしても、普通の子なら嫌がりそうなのに、そういう細かなことをあまり気にせず、案外仲良くしているみたい。
面白い子だなぁ、とその様子を一歩ひいた目線で見守ることが多いけれど、正直、全く蚊帳の外なのは少し面白くないかな。
あと、普通の女の子なら喜びそうなこと、
例えば、
「かわいいね。」
なんて言っても、
『からかってもなにもでませんよ?あ、さっき信玄さんが探していました。お仕事だそうですよ。』
なんてさらりと流されてしまって、挙げ句仕事の伝言だったりが降ってきたりする。
薬師のことも、自分でやると言い出したらちゃんとやりきるまで投げ出さないし、妙に強情なとこもあったりするけれど、芯がしっかりしていて揺らがないところは、ちょっと信玄様にも似ているように思ったりしているんだよね。
そんな彼女から僕へと珍しく投げ掛けられた質問に、なんとなく興味をもってもらえたことを嬉しく思いつつも、それを深くは追求せずに、
「女の子達は嫌いじゃあないし、傷つけたり悲しませたくないからね。」
と軽く答えた。けれど彼女はその回答にあまり納得していないような素振りで、
『昌信さんは、華やかだし、かっこいいし、女の子たちの反応は納得ですけど、みんなに優しくするのって疲れてしまいそう。』
と、じっとこちらを見つめて、本当に無理してません?なんて、首を傾げて心配をしている様子で、全くこの子の思考はいつも僕の斜め上を行くな、とつくづく実感させられた。
