第4章 そういえば自己紹介もまだだった
それからすぐ、少し遅めの食事をはじめると、彼は『花宮真』と名のった。
高二らしい。
聞くところによると、バスケ部の主将をやっているらしく、少し意外に思った。
呼び方は好きにしろ、とのことだったので私が試しに「真(まこと)くん」と呼ぶと、ものすごく嫌な顔をされた。
“くん”を付けられるのが気持ち悪いらしい。
「じゃあ、なんて呼べばいいのよ」
「普通に“花宮”でいいだろ」
だったら最初からそう言えって、と思ったけれど、口には出さない。
「私は、越智まゆり。越智でもまゆりでも、自由に呼んで」
「じゃあ、越智」
「ん、わかった。よろしくね、花宮」
食器を洗い終わって、私もお風呂に入るかな、なんて思いながら台所を出ると、ソファーに座っていたはずの花宮がなにやらテレビゲームを立ち上げていた。
シュワン、という音とともに、ゲームのタイトル画面がテレビに映しだされる。
弟の影響で、一時期やり込んでいた格闘ゲームだった。
花宮がくいっと顎を上げて、こちらに振り返る。
どうやら誘われているらしい。
ふーん?
まあ、私そのゲーム、けっこう得意だけど?
弟と鍛えた腕は、まだなまってないはず。
「あっ……もしかして私、接待プレイを求められてる?」
「あ? バァカ、そんなんしたら、ボコボコにする楽しみが減っちまうだろ?」
そうとう自信があるようだ。
私も花宮の隣に座って、コントローラーを持つ。
「あっ、私もそのキャラ好きなんだよねぇ」
「へぇ」
「私こう見えて、けっこう強いよ?」
「へぇ」