第4章 そういえば自己紹介もまだだった
待ちわびていたはずの金曜日、夜。
我が城は、タチの悪い年下男に落とされてしまった。
いつ敵から無慈悲な命令がくだされるのでは、と私は身構えていたのだけれど、お風呂からあがってどこか機嫌の良さそうな彼の様子に、私はすぐに首をかしげることになった。
冷たい麦茶を要求される。
ガラスコップに氷を落として、冷えた麦茶を注いだ。
あれ?
私は再び首をかしげてみる。
おかしいな……。
彼はコップ片手に、ソファーに気だるげにもたれていた。
湿った黒髪が端正な顔と相まって、色っぽい……じゃなくて。
だってさ、さっきさ、すごかったじゃん。
お前の人生における自由は全てなくなったんだ、ってくらいの気迫だったじゃない。
にも関わらず、今は私にはなんの興味もないように、ふわりとあくびをしているのだ。
あれえ?
なんだか……拍子ぬけ。
脱衣所での出来事が夢だった、なんてことはさすがに思えないけど。
彼のわずかに上がった口角や細められる瞳を見て……もしかして、私より優位に立ちたかっただけなんじゃあ? とか思えてきた。
とりあえず、しばらくは様子を見てみよう。