第38章 【一目惚れ】×【初恋】
その夜、懐かしい…いや、また同じ夢を見た。
公園のベンチに座って泣いている1人の小さな女の子。
そこへ、女の子と同じくらいの小さな影が近付く。
影は女の子の後ろで止まると、後ろからその女の子に声をかけた。
「どうして、ないてるの?」
女の子は振り返る。影の正体は、小さな男の子。
目に涙を浮かべたまま、女の子は言った。
「けがしちゃったの。」
女の子が言うと、男の子は女の子を見た。
見てすぐに、膝に痛々しい怪我をしているのに気がついた。
「……転んじゃった…。」
「…そっか。」
男の子は優しく笑って、ポケットからポケットティッシュと絆創膏を取り出す。
「ちょっとまってて。」
そして、そう言ってどこかへ行ってしまった。
女の子はベンチに座って待っていた。
さっきまでは痛くて辛くて悲しかったけど、なんだか今は少しだけ楽しいような気分だった。
今も足は痛いはずなのに、どうして気分が少し楽しいのか女の子には分からなかった。
しばらく待っていると、さっきの男の子が走って戻ってきた。
男の子は女の子の足の膝に、ティッシュを当てる。
「…いたっ、」
「ごめんね…少し、がまんしてて?」
そのティッシュは、濡れていて傷に染みる。
男の子は傷口をぽんぽんと優しく叩いて、そこに丁寧に絆創膏を貼った。
もちろん、両方同じように。
「これで、きっとすぐに良くなるよ。」
同じ歳くらいのはずなのに、女の子にとってその男の子はすごく大人に見えた。
お母さんがその女の子にいつもしてくれることに、それはとってもよく似ていたから。
「…それじゃあ、ぼくはもう行くね。」
女の子に手を振って、男の子は立ち去ろうとする。
それを、女の子が止めた。
「…ありがとう。これ、あげる。」
そう言って女の子が渡したのは、自分のバッグに着いていたストラップだった。
小さな鳥がリボンを付けているもの。2つあったうちの、1つ。青のリボンの方。
「…わぁ…かわいい!ありがとう!」
男の子は嬉しそうにそれを受け取ると、ばいばいと手を振ってどこかへ行ってしまった。
女の子も寂しい気持ちになりながらも手を振り返す。
―きっとまた会える。そう信じて。