第75章 【甘えん坊彼氏】×【やきもち】
「ねえ、それさ…いつも見てるけど好きなの?」
むすっとした顔で、君は私をじっと見る。
「それって?これ?」
手に持っていたスマホの画面を指さすと、小さく頷いた。
画面に映っていたのは、
友人におすすめされて最近ハマっているアニメだ。
たしかに、最近暇さえあれば見ていたかもしれない。
「うん、面白いよ。空くんも見る?」
見ると思ったのに、君は首を横に振る。
「嫌だ、見ない。」
なんだか様子がおかしい?
「…もしかして、怒ってる?」
「うん、怒ってる。なんでか分かる?」
珍しい。
いつも別になんでもないと言ってどこかへ行ってしまうのに。
怒っている理由は分かっているけど、
ここは敢えて、知らないフリしてみたりして。
「わかんない。なに、おしえて」
君が近付いて、暗くなって、ふわふわ甘い香り。
大好きな匂いと暖かい感触で、君に抱きしめられたと分かる。
「…寂しい」
「え?」
「最近そればっかじゃん。俺にも構ってほしいんだけど…」
泣きそうな声で君が呟く。
なんだかいつも余裕そうな君が
私に甘えてくれているみたいで、嬉しくなった。
顔が見えないから、表情が分からないのが残念だけど。
「じゃあもう見ない。」
携帯をソファにぽん、と軽く落とすと、君が私から離れて。
に、っと楽しそうに笑った。
それはまるで、悪戯好きのこどもみたいで。
「やっと俺の方見てくれた」
騙されたような気分だ。
君はやっぱり、演技が上手い。
「もう、落ち込んでるんだと思ったじゃん…」
「雨衣が携帯ばっかり見てるから、意地悪したくなったの。
…でも俺、嘘は言ってないんだけど?」
じと、と君が私を見る。
吸い込まれてしまいそうな君の瞳が私を誘う。
「…そのアニメよりも、俺の方が好き?」
「そんなこと、答えは決まってるよ、」
君との距離は縮まって、静かに唇が触れ合った。
段々と深くなるそれに、頭がくらくらする。
「すきだよ、空くんに比べたら、全部負けてる。」
「俺はね? 、雨衣以外全部どうでもいい。」
ふにゃ、って嬉しそうに笑う君に私の気持ちは伝わったかな。
今日はなんだか、とても甘い甘い気分。