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≪刀剣乱舞≫ 春日狂想

第3章 静かの海で 〜後日譚〜


やがてやはり加州の号令で灯りが消された。
しかし消灯後もこのいつもとは違う状況に少しの高揚感を覚えるのか、皆は小さな声でさざめき合っていた。
けれどそれも数分後にはしんと静まり、時折小声で話す声だけが聞こえるようになった。
そして俺はというと、あのギラついた目や台詞は何だったのか。
この数分ですっかり熟睡している長谷部から解放され、ほっと息をついていた。

というか、長谷部寝るの早え!暗くなったらすぐ寝れるって子供かよ!?
と安らかな寝顔にツッコミを入れた。

まあそれでもこの事態にはほっと素直に胸を撫で下ろす。
ふぅと小さく息をつき、微かなざわめきの中目を閉じ、何とはなしにとわの気配を探れば。
まだ寝ていないのかほんの僅かにクスクスと零れる笑い声が聞こえた。
近くも遠くもないこの距離では何を笑っているのかまではわからないが、いつも通りのその柔らかな気配に胸の奥がほのかに温まる。
そして少しの寂しさ。

あの温かで柔らかな身体が今、この腕の中には居ない。
我慢出来ない程では無いにしろ、だからと言って心が求めてしまうのはどうしようもない。
けれどそう感じた所で何もする術もない俺は、閉じた瞳にとわの笑みを思い浮かべながらそっと眠りの淵へと歩を踏み出した。

微睡み始めてどれくらい経った頃だろう。
頬にひどく柔らかで甘い熱を持った感触を感じ、沈んでいた眠りから意識がゆっくりと浮上して行く。

「う、ん…?」
「あ、起きちゃった…?」

頭上から降る、華の香りを纏った聞き間違えようもない声に、夢現つのまま瞼を持ち上げれば。
其処には夢か幻か。
障子を通して薄く差し込む月光の中、布団の上にぺたりと座り、はにかむとわの姿があった。


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