第3章 静かの海で 〜後日譚〜
はぁ、もうこうなったら諦めるしかないか。
そう心の中で独りごち。
皆の嫉妬と羨望の混じった視線と言葉を受けながら。
腰に抱きついたままのとわをとにかく起こす事にする。
「大将!いいから起きろ!!大惨事だ!!」
言いながら彼女の腕を引き剥がし、強めに肩を揺する。
「ん…、だから名前で…って…。え?うん…?大惨事??」
「おう。俺達の事、バレたぞ」
「バ、レた…!?」
ようやく事態を把握してくれたのか、とわはがばりと体を起こし。
俺達を取り巻く皆の姿に目をぱちくりさせた。
けれど彼女の動揺は一瞬の事で。
次の瞬間には何事も無かったかのようににっこりと微笑み。
「ちょっとの間だけど隠しててごめんね?見ての通り、私薬研と恋人同士になったの」
そのとわの台詞にどわっと周囲から動揺から驚愕に変わった悲鳴じみた声が一斉にあがる。
そしてそれは俺も例外ではなく、彼女のあまりに直球な物言いに照れくささでいっぱいになる。
「ちょ…っ、おい!こ、恋人同士って!」
「うん?だってそうでしょう?」
何の他意もなく、相変わらずにこにこと笑顔のままで同意を求めてくるとわに頷くしかなかった。
「あ、ああ…。まあ、そうだ、な…」
「でしょう?でも皆の事も勿論大好きだしとっても大切よ?」
と、とわが全員に向けて微笑めば、恋人宣言と俺達二人のやりとりをぽかんとして見ていた皆がわっと一斉に彼女の元へ押し寄せた。
「わかりました、やげんさんのことはとりあえずおいておくとして。あるじさま!じゃあきょうはぼくといっしょにねてください!」
「ぼ、僕もあるじさまと一緒に寝たいです…」
そう今剣と五虎退が言い出せば。
「ふむ。ならば俺も褥を共にしたいものだな」
「それならオレも主と一緒に寝てみたいぜ?」
「兼さんも三日月さんも言い方が何かいやらしいよ。でも僕も一緒に寝たいかな!」
三日月、和泉守、堀川が続き。
その後は我も我もと皆が口々に一緒に寝たいととわに言い募った。
それにとわは「アハハッ!」と嬉しそうに笑い声をあげると。
「じゃあ今夜は大阪城広間にして、皆で一緒に眠ろうか!」
と大胆なのか無防備なのか。
そんな提案をすれば、皆も「それはいい!」と賛同し。
俺はといえば、想定外のこの展開に頭を抱えた。