第3章 静かの海で 〜後日譚〜
「お寝坊さんのあるじさーん!今日の近侍、乱藤四郎が起こしに来たよー!」
その声と共に、襖が勢いよく開かれる。
ヤバい。
そう思ったけれど時すでに遅し。
「って、あれ…?薬研……!?」
乱の視線がベッドに居る俺ととわに注がれ。
「っ、乱…!待てっ!これはだな…!!」
どうにかこの状況を言い繕おうとあげた俺の言葉も虚しく。
次の瞬間、乱は本丸中に響くような大絶叫をあげた。
「きゃーーーっ!!何でーー!?破廉恥ーー!!」
その大声に、にわかに部屋の外が騒がしくなる。
そして乱も喚く事を止めない。
「どうしてボクのあるじさんと薬研が一緒に寝てるのさ!」
「いや、これはっ…!昨夜だな…!」
「いやーーーんっ!!」
「ばっ…、だからとりあえず大声出すな!」
「ボクのあるじさんがーー!!」
「話しを聞けっ!!大将が昨夜、一人で眠れないでいてっ…!」
しどろもどろに言い訳を始めた俺に更に追い討ちをかけるように。
今さっきの乱の絶叫を聞いたであろう面々が、階下からやいやいと言いながらやって来る気配がした。
「どうした、乱!主に何かあったのか!?」
息を乱し、心底慌てた様子でいの一番に部屋へやって来たのは長谷部。
そしてやはりベッドの上の俺ととわの姿を見とめると。
「薬研っ!貴様、これはどういう事だっ!?」
そう鬼の形相で問い詰めてくれば。
それに答える暇もなく、すでに皆が何事かと部屋に集まって来ていた。