第3章 静かの海で 〜後日譚〜
「ん……」
俺は障子を通して差し込む瞼を刺す眩しさに、小さくそんな声を洩らし。
緩々と重い瞼を開いた。
そこには見慣れぬ天井。
う…ん…?此処は……。
寝起きの回転不足の頭をどうにか働かせようと試みようとすれば。
それより先に体が何かとても温かいものを抱きしめている感触を教える。
そしてその正体を確かめようと、ゆっくりと腕の中に視線を遣れば。
俺の胸にぴったりと頬を寄せ、すやすやと寝息をたてるとわの姿が飛び込んできた。
あゝ、そうか。
昨夜とんでもない醜態をとわに晒した挙句。
更にとんでもなく女々しい事に彼女を離せず、そのまま一緒に眠ってしまったのだ。
早く部屋に戻らねえと。
そう思い、未だ安らかに眠り続けているとわを起こさないようそっと彼女から体を離し、ベッドの上に上半身を起き上がらせたまさにその時の事だった。