第1章 弟からの呼び出し
「姉ちゃんさ、遊びに来てくんね?」
なんて、弟の新一から電話があったのは今さきほど。
私はマネージャーとして高校の合宿に参加しているのを知っているはずなのに…。
「頼むって!
赤司さんにも伝えておくからさ!」
「いやだ!
言ったでしょうが!
最後のウィンターカップだから手を抜けれないって。」
電話口で争っているのが珍しいのか、征くんや後輩、そして、遊びに来てくれていた琥珀や玲央ねぇたちが心配そうに見てくる。
片手でごめんとジェスチャーを送り、これ以上邪魔にならないようにと、体育館を後にしようとした所で手と耳に感じていたものがなくなった。
視線を向けると、思った通り…。
「やぁ、コナン君。」
「あ、赤司さん!?」
犯人はやっぱり征くんで。
無言で手のひらを征くんに向けても、携帯を返してくれるわけでもなく、ただ無言で見守ることにした。
「どうかしたかい?」
「いや、あの…。」
「…ふふ。ごめんよ。
それで何かあったのかい?」
新一くん。なんて小声で言うのだから、思わずため息を吐いた。
「…赤司さん、そんなに俺で遊んで楽しいんですか?」
「そうだね、反応が似てるから楽しいよ。
さすが姉弟だね。」
「あはは…。
えーと、姉さんを貸して欲しくて。」
「あぁ、いいよ。」
「え!?」
「この頃ずっと部活だったからね。
タイミングが良かったよ。」
「姉さんあんなに渋ってたのに…。」
「今日は琥珀たちが遊びに来てるからね。
息抜きでもさせようと話してたところだから。」
「なら、赤司さんの許可は…。」
「あぁ、大丈夫だよ。」
なんとなくだが、征くんが許可したのがわかった。
手招きされて、携帯を返してもらう。
優しそうな笑みを浮かべている彼に何とも言えなくて、口を開いた。
「征くん、許可したみたいだね。」
「あぁ。赤司さんの許可が一番大変だと思ってからよ…。」
「ふふ。身内には優しいんだよ。」
(一番甘々なのは姉さんだけどなー。)
「それで?どこに行けばいいの?」
「ん、あぁ、洛櫻ホテルって所に。
工藤新一の姉です、って言えばいいから。」
「はーい。」
そうやって、電話を切った。
そして身体を征くんの方へと向ける。