第1章 プロローグ。
文豪、芥川一二三【豪年120歳】
誰もが教科書出習う人物。私でも直ぐにピンときた。
本が凄く売れた世界一の物書きだからではない。いや、確かにミリオンセラーとか普通に何回も出してるけども。
歴史で習うのは彼の経歴ではない。
その特殊な個性についてだ。
特殊個性、ワールドイズマイン。
その名の通り世界を意のままに出来るとかなんとか。
詳しい情報が出回らないから、よくはわからないけれど。人も、動物も、運命も、世界の法則も全てを好きなようにできるらしい。
政府側だか、個性の保持者だかのどちらかが意図的に情報を流さないし。さらには個性を発動して書き換えられても周りは自覚もなければ、違和感も感じ無いらしい。
なので我々一般市民には、なんか超チートな個性の凄い人なんだなぁ。或いは。なんでも意のままに、なんて恐ろしいっ!ぐらいの認識でしかない。
ちなみに私は前者。
だって、どうしようもないもの。
『芥川氏が死去した今。再び、特殊個性ワールドイズマインが世界に解き放たれました。
緊急で開かれた国際会議では無個性の人々を対象に個性検診を義務付ける方針で決まりました』
しかし、どうしようもない。で終われないのが政府だ。お疲れ様です。
アナウンサーのお姉さんが深刻そうな顔で告げると、偉い大学教授の話が始まった。
「ん~なんか必死だね」
若者ならぬ、馬鹿者世代と呼ぼれる弟が呑気にマグロを口に放り込んで言う。
ホントに馬鹿者か。
「当たり前でしょう。ワールドイズマインは自分の思い通りになんでも出来てしまう、殺そうと思えば指1本触れずに人を殺せる。危険な個性なんだよ?わかってる?」
「わかってるけどさ、人って汚いじゃん。必死になった所でそれは個性持ちの気分次第なんだし。
危険だからといって殺したところでまた、別のワールドイズマイン持ちが現れる。キリがない。
俺はこれ程ヴィラン、敵キャラ向きの個性を知らない」
今までよく犯罪者が居なかったと思うよ。
と弟は最後の1口を飲み込み足早に居間を去った。
それは、たぶん。監視の行き届いた箱庭で大事に大事に、望むものを与えて心を満たすのだ。敵側に行かないよう細心の注意を払って。あわよくば付け入り、利用しようと。
そして、怪しい動きをすればきっと殺される。
可哀想に。
私は時期保持者を想い合掌した。
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