第2章 車内にて。
陸の予想外の反応にほぼ全員が目を見開く。
目を見開いていないのは、顔を赤らめる陸を楽しそうに眺める大和と呆れ顔の一織くらいだった。
「七瀬さん、陽菜乃さんの車に五人は乗れませんよ。我儘を言わないでください。」
呆れ顔の一織はため息をつき陸の肩を叩く。
「珍しいなリク、そんなに陽菜乃との時間が欲しかったか?」
大和はニヤニヤしながら陸の顔を覗き込んだ。
「そう、そうですよ!俺、陽菜乃に話したい事があったからっ...!!!」
苦し紛れに陸がそう叫ぶと、大和一瞬表情を歪ませた。
しかし、すぐにいつもの笑顔を貼り付けると「おーそうかそうか。じゃ、お兄さんは譲ってあげましょうかね。」と、開けていた助手席のドアをバタンと閉めた。
「へ...??い、良いんですか?」
「乗りたいんだろ?陽菜乃『の』車に。」
大和はわざとそう言って、紡の車に乗り込んだ。
「じゃあ、三月さんとナギさんもこちらにお願いします!」と紡が声をかけると、二人も車に乗り込んで行った。
「え...あ...」
まさか自分の我儘が聞いてもらえると思っていなかった。と言いたげな陸はポカンとして立ち尽くしている。
「七瀬さん、早く乗ってください!」
「りっくん早くー」
一織と環に急かされるとようやく「う、うん」と返事をして車に乗り込んだ。
「あ、誰か助手席乗ってくれる?」と私が声をかけると「じゃあ、僕が乗るよ」と壮五が助手席のドアを開けた。