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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第3章 『少年』の最期


純に教わったリズムの取り方を脳裏で反芻させながら、ユーリはステップを刻む自分の足が僅かに重くなっているのを覚えつつも、思ったよりも体力が残っているのを感じていた。
(昨シーズンまでは、終盤バテバテだったのに。俺の身体が少しずつでかくなってるのと…サユリが俺の事を考えてジャンプの回数と難易度を下げてたからだな)
リリアと並んでこちらに穏やかな笑みを向けている純の姿を視界に捉えながら、ユーリは彼に言われていた「キープ・スマイリング」で踊っていたが、決してそれは単に教えに従っていたからだけではなかった。
かつてダイヤモンドダストの中を回っていた無邪気な子供の頃とは違うスケートへの楽しさと喜びが、「今の」ユーリの中にある。
それを感じる度に、自然とユーリの口元は綻ぶのだ。
EXとはいえ昨シーズンまでのジュニア上がりの子供だった姿とは明らかに変貌したユーリに、誰もが目を奪われる。
やがて、プログラム最後の要素である高速のレイバックスピンをしたユーリは、演技の途中でリンクに置いていた赤いマントを拾い上げると、数度回りつつそれを再び身に纏い小首を傾げながらフィニッシュポーズを決める。
否や、リンクのあちこちから拍手喝采が鳴り響いた。
大熱狂している『ユーリエンジェルス』は勿論の事、ヤコフは仏頂面のままだが、心持ち帽子を深く被り直すともう一度感嘆の息を吐き、リリアは何度も頷きながら拍手をする。
JJやクリスも手を叩きながら、これまで何処か子供を見ていたようなそれとは異なる視線をリンクのユーリに注ぎ続ける。
勇利とヴィクトルは、ユーリの成長とまたそれを引き出した純の両方を讃える意味で、拍手や親指を上げていた。

歓声に応えながら、ユーリは一番見て欲しかった純に視線を送ると、それに気付いたのか手を叩く純の口から「マラジェッツ、ユーリィ。スパシーバ」とロシア語が出た後で、日本語による「素敵やったで」と続けられたのを確認すると、「おっしゃあああ!」と咆哮と共に拳を突き上げる。

「──アホ。最後で台無しや」

その光景を目の当たりにした純は、低い声でボソリと呟いた。
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