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【YOI】『少年』の最期【男主&ユーリ】

第1章 しっぺ返しは突然に。


「そら、君が悪いわ。僕がその振付のセンセでも、ええ気はしいひんもん」
口調は穏やかだが核心をついた純のひと言に、ユーリは黙って頭を垂れる。
「若さ故の突っ走りは僕も覚えがあるし、それ自体が悪いとは言わへんけど、それによって周囲がどう思うか、君がどう思われるかくらいは頭の隅っこに置いとかんと」
返す言葉もなく、ユーリは手の中のすっかり冷めてしまった紅茶のカップを持て余していた。

事の発端は、オフシーズンに入って間もなく地元ロシアで開催されるアイスショーに、ヴィクトルやギオルギーらと共にユーリも参加する事が決まり、未だ今シーズン用のプログラムはなかったので、昨シーズンのSPかEXのどちらかを滑ろうと漠然と考えていたユーリを、最近ヤコフと復縁した振付師のリリア・バラノフスカヤが、彼女の自室に呼び寄せたことから始まる。
「ユーリ・プリセツキー。今度のアイスショーでは、私の手がけた一切のプロを滑る事は認めません」
「はぁ!?どういう事だよ!」
「色々な意味で、今の貴方は昨シーズンのプロを滑るに相応しくないからです。ヴィクトル・ニキフォロフの振付から私がブラッシュアップしたSPも同様です」
かつてボリショイ・バレエのプリマとして君臨し、美しくないものを認めない彼女の言葉は、容赦なくユーリの出鼻をくじきにかかったのだ。
「ついこないだまで滑ってたんだから、振付とか忘れる訳ねえだろ!」
「それ以前の問題です。昨年のGPFで、貴方は私に一切の報告も相談もないまま独断でEXを変更しました。それはつまり、私の作った振付を否定したと同じ事になります」
「俺はそんなつもりじゃ…!」
「おい、リリア」
「ヤコフは黙っていて。これは、彼が向き合わなければならない問題でもあるのよ」
口を挟もうとしたヤコフ・フェルツマンをいなすと、リリアは更に言葉を続けた。
「また、これは私自身の振付師としての矜持もあります。昨シーズン、貴方の最高のシニアデビューの為に私は全てのプログラムに心血を注ぎました。ですが、貴方は個人的感情だけでそれを放棄しました」
「ち、違っ」
「これでも、シーズン終了までは猶予を与えたつもりです。現に、ロシアナショナルで私は貴方の好きにさせた筈」
以降のユーロとワールドでは、連戦による疲労と成長痛により台乗りを逃していたので、EXを披露する機会がなかったのだ。
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