第12章 惑わせ
祈祷場所に付いてからは神棚らしきものに向けて白い紙がついた棒を振り回す石切丸さんの後ろで私はやることもなく、とりあえず手を合わせて拝んでいた。
振り回すとはちょっと違うけど似たようなものだ。
神様のご加護を授けてもらうための儀式に今の私はとてつもなく場違い感があった。
私の格好だ。
巫女装束ならいいがシャツ一枚で来るなんて罰当たりもいいところなのではないだろうか。
寝起きで考えがまとまらなかったとはいえこれくらい察するべきであったな……
石切丸「はい、今日のご祈祷はお仕舞いだよ」
「……あ、ありがとうございました」
とても為になりそうなご祈祷も見られたことだし、今日はいいことがありそうだ。
いや、あってほしい。
私はご祈祷を終えたことでとりあえず考えてみた。
早急にやることはまずは……服だ。
いやそうじゃない。
服も必要だが一番必要なのは食材である。
私の記憶が正しければ誰かお酒を求めていた気がする。
なので、買い物だ。
買い物の前に……服だ。
「では……スーパーじゃなくて……デパート……いや、シャツ一枚で出ていくなんてことが本物の痴女じゃ……」
石切丸「また、何か悩んでるのかい?」
「あー……いえ。うん、大丈夫です」
大丈夫ではないけど、大丈夫だ。
仕方ないからあの巫女服を洗って何とかするしかないな。
誰かの服を借りてでかけるわけにもいかないし……
「ちょっと脱衣所に自分の服を探しに行ってきます」
石切丸「あぁ、それなら……」
「ん?」
早くも嫌な予感がするのを私は気のせいだと思いたかった。