第12章 惑わせ
石切丸「主、いかないのかい?」
「えっ……あ、うん行きたいのは山々なのですが……」
布団を畳んでこれから向かおうというときに気付く。
夜ならまだセーフだが朝からこの格好で人前に出るのはきつい。
シャツ一枚だけって、もう痴女じゃない!
石切丸さんも、気づいてるのか気づいてないのかわからないけど本当の意味でシャツ一枚。
つまりはシャツの下には……何も、ないのだ。
人は私のことを痴女だと思うかもしれないけど二日三日と同じショーツ、いや……下着を身に付けられるわけない。
私だって女だ。
その辺りは気になるわけで……だからといってシャツの下に何もつけずに歩いて恥ずかしくないのかと問われたなら私は答えるだろう。
とんでもなく恥ずかしいよ!って。
石切丸「私には朝の祈祷があるからね。みんなとの食事も大事だとは思うけど……今日くらいは別々で食べるのも悪くないんじゃないかな?このまま私は祈祷しにいくけど主はどうする」
「祈祷……?」
祈祷ってあれだろうか。
神社のお賽銭箱……いや、違う。
あれはお参りだから……とにかく食堂にはいけないし、一人でいるのも落ち着かないからついていこう。
服の問題は……こんのすけに頼もう。
「じゃあ、ついていきます。祈祷って気になりますし」
石切丸「それじゃ、行こうか」
手を差し出してくれた石切丸さんの手を見つめる。
大きくてごつごつとしてそうな……男の人の手だ。
これは手をつなごうという意味なのだろうと察した私は恐る恐る手を握ると、ゆっくりと歩き始めた。
警戒心、忘れそうになるね。