第12章 惑わせ
「と、とにかく……私は一人で寝るので石切丸さんもお部屋にお戻りください」
これ以上、話すことはよくないと感じたので石切丸さんを押して私は部屋に戻る意思を伝えた。
ただ至近距離に石切丸さんがいて身体が密着しているというだけで私の鼓動はうるさいくらいに高鳴り胸を苦しくさせた。
石切丸さんが理解ある大人だと信じての言葉だったが……私は間違えていたのかもしれない。
彼は大人であるが神様、なのだ。
物に宿った付喪神様。
石切丸さんの瞳は本当に綺麗ではあったが同時に恐れにも似たものを感じた。
その瞳に捉えられてその場から動くことがかなわなくなる。
「ぁ……ッ…」
石切丸「あのときにも感じていたけど……君の瞳やこの匂いはとても危険なものだね」
危険な娘、と最近言われたような気がしたけど、石切丸さんにもそう思われていたのだろうか。
危険と思われるほど悪いこともしてないのに……。
石切丸「今も……昔も、君の清い姿はなにも変わってない私を夢中にさせてしまうほどの……その美しさもね」
「……っ」
なにも言えずにいた私に石切丸さんの端正な顔が近づいてくると、そっと唇が重ねられた。
逃げられない、そう感じたときには何もかもが手遅れだったと私は目を閉じて受け入れた。