第11章 平和……?
「あの人、こういうことに関しては少しも説明してくれなかったからな……」
いきなり何十人の社員を持つ社長に抜擢された気分だ。
やることは本当にたくさんある。
食事はまあ、無難に当番制にするべきだろう。
試しに作らせて絶望的な料理の腕をしているものには台所には立たさないようにして、凄腕にはちょっと頑張ってもらって……。
畑のことも当番制にするといいかもしれないが……野菜を育てるわけだからなにも知らずにあれやこれやとやって、野菜をダメにしかねないからそこはやはり希望する人にお願いすることになるかな。
しばらくして食べ終えると、蛍丸達にバイバイしてから食器を流し台に持っていく。
やはり食堂の隣が台所となっていた。
冷蔵庫もあるしIHのコンロもあるし……現代風だな。
たくさんの食器があったので腕捲りをして早速洗い始めた。
本気で早急にいろいろ決めないとごみ屋敷になりそうだ……恐ろしい。
「お風呂も広かったし庭もおしゃれだし、台所も……充実してる。そこは助かるな……」
食器を洗いながら、改めてこの本丸のことを考えてみた。
引っ越ししたとしても家具や家電を置いていくのはなんだか不自然であるので多分引っ越しではない。
引っ越しの可能性も捨てきれないが……なんだろう。
そうじゃないって感じがしてうまく言葉にできないな……。
「もし、引っ越しじゃないなら……そういうことって考えるべきなのかな」
詳しくは知らないが、力を失った審神者がまれにいると聞いたことがあった。
その審神者は徐々に力を失い刀剣達の人としての形の維持も難しくなっていずれは……と。
「……どんな事情があったのか知らないけど、この本丸を大切にしてきたことだけは私にもわかる。だから私も大事にしよう」
そして、刀達に……幸せになってもらいたい。