第5章 食戟
Noside
大きな歓声。
「審査は決した!この食戟」
「薙切えりなの勝利とする!」
その中、豪田林清志は悔しそうに顔を歪ませる。
豪田林「そんな…俺達の…ちゃん研が…!」
と、その時、薙切えりながちゃんこ鍋を試食する。
えりな「先輩の品には至らぬ箇所が二十七点あります。」
「!?」
至らぬ箇所を、つらつらと話し始める。
神の舌を持つ彼女が下した料理への評価は厳しかった。
えりな「まず伊勢エビ霜降りの時間が二秒余計です。次に牡蠣からわずかに出た雑味が鍋全体の風味を損ねている。そして野菜の遇いですが」
豪田林「黙れぇっ!お前の…お前の料理が何だというんだ!今日の為に練りに練った俺の品より上手い訳が…!」
薙切えりなの発言を遮り、怒りだす。走っていき、彼女の作った料理を食べた。
【ラビオリ・ド・ラングスティーヌ】
食べた途端…
豪田林「!!!」
豪田林「(ふわふわと蒸し上がったラビオリの中から、ぷりっとした手長えびの旨味が溢れる、弾むようなしなやかさはまるで)」
豪田林「(横綱の凄みに圧倒されているかのような――――)」
薙切えりなは、神の舌を持つだけではなく、料理の腕までも良かった。その料理を、腕を、豪田林清志は認めざるを得なかった。
豪田林「(味の次元が違う…ご、極上ー!)」
豪田林「あふぅんっ」
膝から崩れ落ちた豪田林清志。と、そこで薙切えりなが電話をすることに気づく。
豪田林「…?」
えりな「私ですええ。始めて下さい」
始めて下さいという言葉が何を意味するか、すぐに理解した。
豪田林「や…っやめっ!!」
豪田林「止めるでごわすー!!」
巨大な鉄球がちゃんこ鍋研究会の建物に直撃する。
メリメリと音を立ててちゃんこ鍋研究会の建物から、歴史─全てが破壊された。
豪田林「(冷酷、非道。これが、食の魔王の血族か─)」
えりな「ごきげんよう」
薙切えりなのその笑みは、悪魔の笑みだった。