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【アカセカ】君とつながる物語※R-18

第1章 【雑賀孫市】雑賀の郷の夏祭り



程なくして孫市は千草の元に戻って来た。

「これでいいか?千草」

孫市が渡してくれたのは、冷やし飴だった。
一口飲むと冷たさと甘さでかなりすっきりする。

「美味しいです…ありがとうございます」

「悪かったな……巻き込んじまって」

孫市は地面に膝をつき、千草と目線を同じ高さにする。

急に顔が近くなったせいか、千草の鼓動が自然と跳ねた。


「いえ…そんな……助けて下さってありがとうございます」

「当然だろ……」

孫市の指が、千草の後れ毛にそっと触れる。

「間に合ってよかった」

「……あ…は、はい……」


緊張のせいか、わずかに声が上ずってしまい千草は顔を赤らめる。


「……千草」

孫市の声がいつも以上に低く優しく響く。


「……は、い…」


「今日は……随分雰囲気が違うな……」


そう言いながら、孫市の指がすっと頬を撫で、顎を捉える。

「そ、そうで、すか?」

「ああ………」

孫市の親指が、千草の唇に触れた。

(………っ!)

ぴくりと震えてしまった千草の肩を見てはっと我に返った孫市は、そっと手を離した。

「………悪い。……今日はいろいろあって疲れたろ、宿まで送ってく。歩けるか?」



孫市は目線をそらしたまま立ち上がろうとする。

「……あ…!」

咄嗟に千草は立ち上がろうとした孫市の服の裾を掴んでしまった。


「………っ」

今度は孫市の方が驚き、千草の方を振り返る。


「…あ、ごめんなさい……その……」

(わ、私ったらなんてことを……)

慌てて手を離し、千草が俯くと
孫市はその手をぐっと掴んだ。

(えっ?!)

手を思いきり引っ張り上げられ、その勢いで千草は立ち上がる。

よろけそうになった千草の腰元を、孫市の大きな手が支えて抱き寄せた。

「……あっ」

「………まだふらつくみてぇだな……今夜は俺んとこに泊まってけ」

「えっ……?!ま、孫市さん……!」

慌てふためく千草の言葉を聞かず、孫市は再び千草を抱き上げる。

「あ、歩けます…!大丈夫ですっ……!」

孫市は表情を変えずにそのまま屋敷まで向かっていった。


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