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【アカセカ】君とつながる物語※R-18

第1章 【雑賀孫市】雑賀の郷の夏祭り



木材が倒れ掛かってくるその直前
聞き覚えのある声が響いた。


「全員伏せろ!!」


それと共に銃声が響く。

(………っ…)


ガラガラッ!!

木材が地面に散らばり落ちる激しい音が響いた。


(………あれ、痛く、ない)

千草はゆっくりと身を起こす。

「大丈夫…?怪我、してない?」
庇っていた男の子は黙って頷く。
「巫女様……平気?」
泣きそうな顔の男の子に、千草は笑顔で頷き返す。

「おい、こっちだ!!早く捕まえろ!!」

雑賀衆の若者たちが遠くから声を上げる。
(一体何が……)
千草が真横に散らばった弾痕の残る木材に目をやると

「千草!!大丈夫か?!」

聞き慣れたその声に、安堵が湧き上がる。

(ああ……やっぱり……)

顔を上げると、そこには息を切らせて駆けつけてきた孫市がいた。


「…あ………」

孫市の顔を見た瞬間、恐怖と安堵が無い混ぜになってこみ上げる。


「もう大丈夫だ……立てるか?」

「…はい……あっ!」


千草は腰が抜けてしまったのか立ち上がれない。

よろける千草を孫市がとっさに支える。


「おっと……無理するな…」

「……!孫市さ……!」


孫市はひょい、と千草を抱き上げる。
突然孫市の体温を間近に感じ、千草は顔を赤くした。

「巫女様…怪我したの?」

「いや、大丈夫だ…心配しなくていい」

孫市の答えに、庇われていた男の子はホッとした様子で母親の元へ駆けていった。


「頭領ー!!賊は全員捕らえました!!」

遠くから雑賀衆の若者の声がする。

「よーし、そいつら伊達城を襲った賊の仲間だ!明日伊達城に引き渡すから牢に入れとけ」


「……何か、あったんですか?」

小さく問う千草に孫市は穏やかに答える。

「なぁに、もう心配いらねぇよ……」

孫市の熱い体温が千草の身体を包み込み、言いようのない安心感を与えてくれる。


孫市は祭りの喧騒から少し離れたところにある、大木の下の石段に千草を座らせた。

「何か飲めるか?」

「はい」

「待ってろ、今持ってくる」

そう言って出店の方へと向かっていった。



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