第2章 面白い奴
「お疲れー」
「山崎先輩、お疲れ様です」
「おう、お疲れ」
練習後、着替えを終えた俺は、他の奴等に挨拶を返しながら更衣室を後にした。そして、少し歩いたところで、またあいつにばったりと出くわした。ええと、名前は確か・・・と考える間もなく、口から言葉が出てしまっていた。
「お、いちご」
「げ、山崎宗介」
ちなみにこの台詞は全くの同時だった。
「いや、『げ』ってなんだよ」
あとなんでフルネームなんだよ、と言おうとしたが、俺の言葉は遮られた。
「私、い、いちごって名前じゃないです!私の名前は長島ヒカリです!さっき言いました!」
どうやら『いちご』と言ったのが相当頭に来たらしい。すごい剣幕で怒っているが、その顔は真っ赤で、いちごそのものだった。余計怒らせるとわかってはいても思わず言ってしまう。
「おお、悪かった・・・いちご」
「ま、また・・・ぅぅ~~っ!!」
予想通り更に顔を赤くして怒る。その反応に思わず口元が緩んだ。
「あんま怒るな。余計、いちごみてえな顔になるぞ」
「へ?や、やだ・・・ぅぅ・・・もう・・・」
いちご(本名よりもこっちの方がしっくりくる)は火照りを冷まそうとしているのか、自分の頬をペタペタと叩いたりしている。その仕草が面白くて、更にからかいたくなったが、やめることにした。こいつは江の後輩だから、言い付けられたりしたら、面倒なことになる。