第2章 面白い奴
「なあ、宗介。お前今日何かあったのか?」
「あ?何かって?」
今日の練習が終わり、夕飯を食べ終えた俺は、寮の部屋に戻り、ベッドに横になっていた。夕飯後、似鳥達に捕まっていた凛がようやく戻ってきた時の、俺への第一声がこれだった。
「飯の時、すげえ機嫌よさそうに見えた」
「そうか?」
「トレー下げる時、お前、鼻歌歌ってたろ?そんなことめったにねえのに」
・・・さすが凛だ。俺のことをよく見ている。だが、鼻歌は記憶にない。きっと無意識だったんだと思う。
「別に何もねえよ」
「そうか?」
「今日のトンカツ、旨かったからな。それじゃねえのか?」
「ふーん、まあ機嫌いいんなら、いいんだけどよ」
不審がる凛にそう答えると、まだ納得していない様子だったが、俺にこれ以上聞いても無駄だと悟ったらしい。俺の下のベッドにごろりと横になると、雑誌を見始めた。
俺は起こしていた身体を再び横にし、じっと天井を見つめた。
機嫌がいい・・・か。そうかもしれない。
今日初めて会った、ちっこくてうるさいあいつ。
俺は目を閉じると、今日の練習後のことを思い返した。