第9章 はずむ心
「はぁ・・・会いたいなぁ・・・」
「誰に会いたいの?」
「ひっ!わああ!な、渚先輩!!」
気付いたらすぐ側に渚先輩が来ていた。まったく周りが見えていなかったみたい。
「あはは、ヒカリちゃん、びっくりしすぎ!ねぇ、ねぇ、会いたいって誰に?もしかして僕?」
「え、えーっと、はい、そ、そうです」
「えぇ〜〜、なんか嘘っぽいなあ」
そう言って頬を膨らませる渚先輩。こういう仕草はひょっとして女の子より可愛いんじゃないかと思う。
「あ、あはは・・・」
「あ、そういえばさ、この前凛ちゃんと山崎くんと映画行ったんだって?江ちゃんに聞いたんだけど」
「あ、はい、そうです」
話しながら渚先輩も私の隣に腰を下ろす。
「なんか凛ちゃんは昔から知ってるからわかるんだけど、山崎くんって想像つかないなあ」
「え?と、言いますと?」
「うーんとね、映画観ててもご飯食べてても、こーんな!感じで仏頂面?みたいな・・・」
「ぷっ!」
指で自分の眉をきゅっと上げて見せる渚先輩に思わず噴き出してしまった。確かに宗介さんって基本的にそんな感じだよね。でも・・・本当はそうじゃないことを私はもう知ってる。