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君はオレの全てで、生きる意味なんだ。

第4章 『冗談。大っ嫌いよ。あんな人』


「前野」

「なに?」

 宮代君は私と目を合わせると、躊躇いがちに言った。

「机、くっ付けないか?」と。

「どうして?別に机をくっ付ける必要は無いんじゃないの?」

 机をくっ付けなくても、質問や相談なんかはできるし、なにより私と宮代君の席は隣同士なのだから、余計に必要がない気がする。

 どうして?と問えば宮代君は少し恥ずかしそうに、笑った。

「憧れてたんだ、机をくっ付けるの」

 はぁ?憧れ?机をくっ付けるのが?

「オレ、今までずっと友達とかいなかったからな。どうせ前野も友達いないんだろ?」

「友達いないんじゃなくて、必要ないの。同じにしないでよ」

「一匹狼なんだな、前野って」

「別にそんな大したものじゃないわ。私はただ大勢でいるのが嫌いなだけ」

「やっぱり一匹狼だ」

 そういってくつくつと笑う宮代君を尻目に、レポートを書くのに参考になりそうなページを探し始めた。

「好きな古文を1つ選んでまとめろ、か…。オレ、古典きらいだからなぁ…。前野はなにか良いのあるか?」

「源氏物語」

「源氏物語って、あれだよな、男がハーレム作ってるやつ」

「まぁ、簡単に表現するとそうなるかも」

 一見珍解答のような『ハーレム作るやつ』というのも平安時代では当たり前の事だったのだから間違っているとは言えない。でも、もっと別の表現があっただろうに…。

「前野は光源氏みたいなのが好きなのか?」

「冗談。むしろ大っ嫌い」

「だろうな」

 宮代君は笑いながら、でも、と言った。

「課題は“一番好きな古文”だぞ?」

「嫌いだからいいんじゃない。レポートの内容が濃くなるわ」

「くれぐれも悪口は書かないでくれよ。オレの評価まで悪くなるからな」

 そんな軽口を叩きながら2人でレポートをまとめていった。

 そして、少し不思議になった。なんとも表しがたい奇妙な気分。


(私、友達も彼氏も持たないって決めてた筈なのに…。いつの間に私は宮代君とこんなに話すようになったの……?)

 
 気づかない間に、アッサリと私の側に腰を下ろして笑っている宮代君に少しの焦りを感じながらも、その焦りは決して心地の悪いものでは無かった。

 
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