第40章 ト短調 あなたは……?
『また泣いてんの?』
と男の子の声がする。
それでも子供の私は泣いている。
『はあ。ほら、早く。』
男の子は子供の私の手を引く。
『あなたは……?』
『俺は——。』
私は、いつの間にか涙を出して、光に飲み込まれた。
「……?」
「咲良姉上!」
目の前には、百合子の姿があった。
「百合子……。大丈夫。」
「ごめんなさいごめんなさい!」
百合子は、涙を浮かべて謝っていた。
ーシュッ
「目を覚ましたか。」
「謙信様……。ご迷惑をおかけしました。」
私は上半身を起き上がらせて、言った。
「ああ、大丈夫だ。体調は?」
「まあまあ良いです。」
「そうか。百合子、咲良を広間に連れてこい。」
そう言って謙信様は部屋から出た。