第9章 ホットはいずれ
目の前には九条邸の庭
たくさんの花に囲まれて立っているわたし
隣に立っていたのはおねえちゃん
わたしが大好きで大嫌いな人
お姉ちゃんはなにも悪くない
お姉ちゃんはわたしを大事にしてくれている
隣のお姉ちゃんはわたしに微笑む
その手にもっているのは、注射器
お姉ちゃんは、微笑むとわたしの腕に注射器をさした
頭が息苦しい
気持ち悪い
「…っ、ぁあ…!」
「…夢か、でもなんなのあれ」
それは、とても縁のない光景
身体にぐっしょりと汗をかいている
思わず洋服をまくり上げて
夢の中で注射器でさされた箇所を確認した
「…そんなわけないのに、何してるんだろう」
コンコン
宮「おはおうございます、起きてらっしゃいますか?」
「あ、はい!」
宮「失礼しますね」
豪さんはわたしのどうぞ、という声を聞いてから扉をあけた
宮「…李さん、どうされましたか。すごい汗ですよ」
豪さんは心配そうにわたしの顔を見ていた
汗をぐっしょりかいたにも関わらず大して水分をとっていないからか、なんとなく頭がぼおっとしている
「あ、はい。大丈夫です」
汗を手でぬぐうと、豪さんはすぐにどこからかタオルをとりだし、わたしの顔の汗と手、腕とぬぐってくれた
宮「あまり、顔色が良くありません。夢見がわるかったんでしょうか、どんな夢を…」
「…」
夢という言葉に、うまく返事ができなかった
言葉が、まるで喉に張り付くような感覚を感じ
なんとなく、だれかに話すべきではない気がした
宮「…、とにかく。お飲み物と着替えをご用意します。もう少し横になっていてください」
宮瀬はそう言葉を残すとあっという間に出て行った
「なんで、言えなかったんだろう」
ふう、と吐き出しながらそのままベッドに横になった
昨日は、頭がすっきりして眠れる気がしたのに。
宮瀬は、飲み物と着替えを用意し再び李の元を訪れ
これまたどこから用意したのか、女性ものの洋服。しかも、おそらく李のサイズがぴったりのものを渡し
お待ちしています、と伝え出て行った
「なんで、サイズぴったりなのしかも。この洋服って…いや、でも折角用意してもらって。…だからといって、これはちょっと」
目の前には、普段着なさそうな可愛いデザインのワンピースだった
ちょっと、ネグリジェ感ないか、これ…