第2章 3人目の男
美「渉が小学校を卒業して、中学に上がる前の春休みにね、渉の家に行ったの。そしたら…表札が無くなってた」
怜「それって…」
美「うん、引っ越してたの。何も言わずに、私の前から消えちゃった。お母さんに聞いても、誰に聞いても、どこに引っ越したか教えてくれなかった。暇さえあれば街中探して歩いたけど…横尾って表札は見つからなかった」
北「ほんとに消えたと思ったんだな…」
怜「何もかも見えないんじゃ…どうしようもないよね…」
美「その時思ったの。私が弱虫だから愛想つかして消えちゃったんだって。だから強くなることにしたの。空手、柔道、剣道。でも…結局私は弱虫だった。今日それがようやく分かったんだ」
遠くを見るように、美鈴は語った。