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喫茶店でのんびりと(文スト)

第5章 恨まない(中島夢)






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「....、日頃の成敗!」


によによと気持ちよく寝ている敦くんのおデコに結構強めにデコピンをしてみたけれど、当の本人はうんともすんとも言わず、ただ頬を緩めるだけ。


其れがまたどう仕様もないくらいに可愛らしいもんだから、更にイラつきが増す。そして、同時に愛しさがぶわっと溢れてくるから何だか今の自分の感情がよく分からなくなってしまう。




こうも感情までもが他人に振り回されているのは初めてだ。


ちゃっかり私に苦労をかけている敦くん。
しかし彼が起きているうちには仕返しなんて到底出来ないままの私も彼に甘いのだろうけど。



..まさにこれぞ小悪魔というやつなのだろう。




しかしやられっぱなしというのも性に合わないので、ビデオを回してやった。

写真だと音で気づかれる可能性が高いので、今はやめておく。



今度シャッターが無音のアプリを入れておこうと胸の内に決めておきながら、彼に向けてカメラを向ける。


画面越しでも女なのか男なのかよく分からなくなる辺り相当顔が整っていることがわかるのも悔しいけれど、これは彼を脅すのにかなり良いものになりそうだ。






...まぁ、脅すつもりはないけれど。



回していたたった十数秒の動画を切って、カメラロールに保存する。きちんと保存出来ていることを確認して、携帯をポッケにしまう。





なんやかんやいって彼のことを毎度毎度許してしまうのだけれど、矢張り私は彼に弱いと思う。


...いや、【かなり】弱いな。


確かに芥川にも弱いけれど、敦くんはなんと言うか、人を駄目にする力を持っているのだ。彼に恋をしてしまう気持ちもよーくわかる。

だって癒しパワーはいつも全開だし、天然でドジっ子だし、だけど紳士的だし。この間の土砂降りの日なんか相合傘までしてくれちゃって、女子生徒に恋人やらと勘違いでもされたら私は敦くんが好きな女子生徒に確実に殺される。



...嗚呼、そんなことを想像するだけだも身震いをしてしまう。


其れもこれも、全部は隣の敦くんのせいだ。






「.....、まだ死にたくはないから、宜しくね。この野郎。」



恨みを込めながら、今度は更に強くデコピンをしてやった。






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恨まない(完)


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