第5章 恨まない(中島夢)
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バスに揺られて早2時間。
辺りも暗くなってきて、太陽はあっという間に沈んでしまった。
お昼頃から始まったオープンキャンパスは夕方頃に終わったため、今帰りとなっているのだけれど、なんせ道のりが長い。
まだの外を見つつ、3時間以上揺られ続けた今朝のことを思い出す。
幸運にも渋滞もなくスムーズに行くことができたのだが、それでも3時間掛かった。
隣に座っていた敦くんはいつの間にか寝てしまっていて、前方に座る2人も寝息を立てていて、起きているのは私のみとなってしまったのだ。
そして今も朝と変わらず、このパターン。
何をしようにもゲームはやりつくしてしまったし、充電もそろそろ20パーセントを切ってしまう。
しかし帰りの駅に着くのは後1時間弱で、つまりは暇である。
「...、よく寝るね、敦くん。」
私の隣で寝ている敦くんの頬を軽く摘めば柔らかい感触と、少しの身動ぎ。
その表情は完全に緩み切っていて、外だというのに良くここまで安心しきれるものだと溜息が漏れる。
敦くんが起きないことをいい事に、更に両手で顔を撫でるように、時々頬を摘んだりしてみた。
...柔らかいし、触り心地がとても良い。
何だか触っているのが楽しくなってきたのでやりたい放題顔を弄っていたら、流石にやり過ぎたせいか、敦くんが少し目を開いてしまった。
その目はまだ空虚を見ているのか、何も喋らずにぼーっと何処かを見つめている。
「あ、ごめんね敦くん。起こしちゃって...。」
「....、」
目を開けてはいるけれど返事をしない辺り、まだ完全に起きてはいないのだろう。
その表情と言ったらすごく間抜けで、写真に収めて後でからかいたくなるほど面白い顔をしていた。
「おーい...、」
惚けている敦くんの目の前で手を振ってみるも、まだ眠たいのか再度目を閉じてしまった。
....まぁ、今日は朝からバスに乗って長時間揺られ続け、しかも長い学校説明会を受けて再度またバスに揺られているのだから疲れるのも仕方がない。
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