爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第1章 西海之役
有馬少佐の愉悦を吉野首相が窘(たしな)めた。少佐は横柄にも首相の前でふんぞり返って腰を掛け、首相の言葉を聞き流した。
「星川如きの軍閥と妥協せねばどうにもならんのは、ソフト以前にハードの差だ。中共とソビエトのスクラップ品を寄せ集めた程度の機甲戦力相手にするから出来上がりもしけてしまう。帝国は来(きた)る統一に備えねばならぬのに、予算をたらふく喰った設備局があの体たらくじゃあね、愚痴の二三も口をつくって物だ」
制止を受けたせいか、言葉の端々から慎重さを投げて言い切った少佐は今度はムスっとした顔で腕組み背もたれに体重をかけた。皮肉屋で偏屈、加えて帝国空軍の指揮官に成り上がった〈飛行機野郎〉である少佐には帝国の現状への強い不満があった。首相はこの我の強い武官を持て余していたが、東京から派遣され現場部隊にて辣腕を奮うガチガチの極右将校であった関兵八(せき へいはち)空軍大佐以外の選択肢がなく、登用もやむを得なかった。
首相は視線を端にズラした。端から声が掛かった。
「愚痴った所で」
そう言って煙草に火を付け、少佐の睨みを吐き出した煙でぼやかした。
「設備局のボケがデリートされるわけでも、大島が返るわけでもないだろう。一々口尖らせて、ピーチク抜かして、男の格を落とすなよ、有馬」
「…何を、貴様」
「はい、やめやめ! ミス・ハスイケ、無用に煽るのは止めてくれないか?」
少佐が一瞬で紅顔し、こめかみに脈打つ様が見て取れると、顧問が中腰に立ち上がり両手で灰皿と地図を広げる長机の対岸にいる両人を諫めた。
「…夏希ぃ~」
ボソッと小声で吉野首相は端へと呻き、内心副官の蓮池大尉に頼った数刻前の自分を罵った。
蓮池大尉は煙草を吹かせ顔を吉野首相から背けている。有馬少佐は相変わらず沸騰寸前の赤ら顔で来栖顧問の横目にも気が付かず、対岸の大尉を脇目に睨んでいる。先程から口を出さない馬場副官は口を結び腕を組んで顛末に関せずといった様である。元々口数を絞りその代わりに頭の中で計略を練るのが副官の常の有り様で、これといって普段から変わりのないのだが、首相からすると、せめてこういう時には一言でも諫めてくれても、と思わないではない。