爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第1章 西海之役
外は曇り、午前中だと言うのに執務席後背のブラインドの隙間より日が射さない故か部屋が少し暗く感じる。湿った外気から午後の天候は容易に想像できたが、乾き尽くした執務室では、何が発端で火が付くか却って分からなくなっている。馬場副官が怒り狂った様は見た事がないが、有馬少佐は以前に出張先の禍津日原(まがつひはら)の学校で大人気なく生意気な女子学生に激昂して殴りかかって代わりに顧問教員の頬骨にヒビを入れて3箇月謹慎を余儀なくされ、蓮池大尉はタブロイド紙のしつこい追跡に堪忍袋を断ち切り記者を公道の真ん中で半殺しにして軍法会議で予備役編入処分を喰らい、一見穏やかそうな来栖顧問も米軍時代には琉球のチーマーの煽りに耐え切れず、10人相手に大立ち回りをして半数以上を再起不能に追い込み、自分も軍を実質追われた。いずれも輝かしい「実績」を持つ紳士淑女ばかりだから本当に恐ろしく、それらが今眼の前に揃ったのだから最早言うまでもなく、戦々恐々とはまさにこの如き様に相違ない。
結局執務室の口論を端に発したクーデターや政変が起きる事はなかったが、遂に碌(ろく)な会議にならず各人ピリピリしたままお開きとなった。吉野首相は別件で話があると伝えてきた馬場副官と共に蓮池大尉を執務室に留めて仕切り直した。
「よくもやってくれたわねぇ、夏希ぃ~!」
「そんな誉めないでやって下さいよ。本人がウザがるじゃないですかァ」
大尉は眉間に皺寄せて迫る首相へ僅かにかかる様に煙草の煙を吐いた。
「蓮池様、礼に欠く振る舞いかと存ずるが」
「えぇ、ホントっ! 無礼討ちしてやるレベルよぅ!」
馬場副官の無抑揚な諫言に乗っかって、煙で咳込み手で幕を払う内に語気が強まった吉野首相の言葉を蓮池大尉は聞き流して先程までいた椅子へと腰掛けた。元々タメの口を利く大尉だが、主人を主人と思わない態度や振る舞いは時にトラブルの火種になりもする。しかし、それでも首相は重用を続けた。
「で、馬場君は何用があるんだい?」
「ちょっと夏希…!?」
「さっさとやりますよ、ホラ。無駄口は腹みたく引っ込めて」
「だ、誰が下腹パンパンよ!? うっさいわ!」
手を上下に振って湯気を立てる主を諫めた大尉は会議の時に広げられたままの地図に指を向けた。
「境港だろ、馬場君?」
「その通りです。ネシアから船が出ました」