爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第4章 九州 大宰府
暫し、間が空いた。水面には揺らいだ月があり、釣竿はそこに餌を下ろしている。一向に当たりの来ない竿を男は忌々しそうに見詰めた。覆面の男は切り出した。
「しかし、これで終わるとよいですね、戦争」
「うまく行けばな」
釣竿の男は遂に諦め、竿を水面から外した。リールから餌を外そうとするが中々手際が悪い。覆面の男は笑っていた。
「解れがあれば幾らでも壊れてしまう事ですからね」
「そうだ。だから、手は尽くさねばならない。大宰府と小倉、その二回がチャンスだ」
「灯台下暗し。そういう事にならない様、気をつけねばなりませんね」
「だからこそ、こちらは全力で仕掛けて注意を引く必要がある」
「やれやれ、また海を渡るのか」
覆面の男はわざとらしく嘆息する素振りを見せたが、釣針からふやけた餌を漸く外せた男はそれに構う事なく、
「頼んだぞ」
と言って、左手で覆面の男の肩を軽く叩いた。
「葡萄月大隊、お前達が紅衛兵共とは違うと証明する、良い機会だ」
そう言って去って行く男は去って行った。それを振り返りもせず、覆面の男は水面に移る月への感慨に耽っていた。
男は釣をしていた所へと腰を下ろし、水面へ岸壁より足を向けた。
「ご安心を。我らは一度として戦場に悔いなど残しませんでした」
覆面の男はそう言うと再びケラケラと笑い、覆面を外して顔を露わにした。
月光はその肌を照らす。光が透いて通るのではと思うほどの白皙(はくせき)、そして黒い瞳。男は実に穏やかな顔で水面の月を見た。
「波の下の都は、きっとこれを月だと思うんだろうな。羨ましいよ、全く」
男はそう言うと、空を見上げて目を細めた。月には雲がかかっている。
「穢れた空に浮かんだ月は、実に不快だもの。世の縮図そのものだ」
明日は雨が降る。水面の月は暫し見納めだ。男はすぐに目を下ろし、この日二度と空を見上げなかった。