爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第4章 九州 大宰府
「博多港からですか?」
背後から問いかけた黒い覆面の男は右手で釣竿を提げて腰掛ける港の住人から一枚の紙を寄越された。
見る所、便箋のようだ。覆面の男は文面をなぞって見た。
「音も無く、覆面も取らず、背後から不躾に、か。随分とデカい態度だ」
「閣下は困った方ですね。私に礼節を求める事は不毛です、とお教えしたではありませんか」
覆面の男はそう言いながら、実に愉快そうな声色だった。釣竿の男は相変わらず当たりの来ない水面を見詰めている。釣竿の男は肩に軍用コートを掛け、頭には制帽がある。
「せめて、挨拶ぐらいは君達でも出来るだろう? 日共では挨拶しちゃいかんルールだったかな? 記憶に無いが」
「閣下は命知らずだ。皮肉を述べれば、舌を切り落とされるのが道理だと教えたではないですか」
覆面の男はそう言いつつ、少し笑い出していた。釣竿の男は相変わらず、水面に視線を落としている。
「まもなく、停戦の使者が宇喜多殿の所に来る。博多はまだこれを知らない。東京は知っているようだが」
「おや、それは重畳(ちょうじょう)。戦争は無いに越した事はないですから」
「そうだな」
釣竿の男は軋む古竿の曲りを見ながらそう答えた。
「停戦の使者は、教会のお嬢さんですか」
「ああ、須崎優和(すざき ゆうな)という女司祭。聞き覚えがあるか?」
「いいえ。ただ」
釣竿の男は覆面の男の答えが一間止まったのにも関心がないように、水面を見詰めている。
「そういえば、紅衛兵達に反革命主義者として〈罰〉を受けた家族の1人がどこかの教会に勤めているとか聞いた事がありますね。風の噂ですけどね」
ケラケラ、そんな笑い声で覆面の男は述べていた。釣竿の男は今尚釣竿を弄ぶでもなく、ただ竿を握っている。
「それに関わったのは紅衛兵だけか?」
「ええ、恐らく。ああ、いや違うかな。野次馬からの飛び入り参加はいたでしょう」
覆面の男は布超しに分かる破顔でそう述べた。顔こそ愉快そうにして、口振りは淡々としつつ、それでいて声色に嗜虐と悦楽を漏らす男は
「少なくとも、我が部隊ではそういう事が無い筈ですのでご安心を」
「なぜ、そう言える?」
「はい。我が兵達は皆同性愛者ですから」
「そうか」
釣竿の男は抑揚もなく返した。