爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第4章 九州 大宰府
体制弛緩の根源と吉岡は言ったが、それはつまり、この暴走・独走を容易に許す鎮台の土壌であった。かつては松本國香(まつもと くにか)兵站課長という稀代の悪党がいて、それと対立と協調を繰り返して鎮台のバランスを取っていた吉野五人衆(よしの ごにんしゅう)と呼ばれた副官達がいた。特に硬骨漢の江上や波佐見則貫(はさみ のりつら)の剛健さは兵を強く戒め、松本課長の謀略は大宰府のコントロールを容易にしていた。それが、吉野菫の蝕まれた両腕として曲がりなりにも機能していた時代もあった。しかし、課長は吉岡と協調する「鎮台の小姑」諫早に白昼殺され、五人衆は内訌の末挙兵に及んだ江上の手により崩壊し、江上の死と共に滅んだ。吉野菫は以降江上の挙兵による政治混乱の収拾を口実に左派の吉野へ掣肘(せいちゅう)を加えようとやって来た東京からの官僚団と大宰府で幅を利かせた非アメリカ留学組の将校達が意趣返しに傲慢不遜、首相何する物ぞと気勢を挙げる様を横目にしながら、黙々と職務を全うして来た。少なくとも、イニシアティブを握れずにいた自分の事も吉岡は含んで非難をしているのだろう。改革の着手をしろ、と言いたいのだ。そう、吉野菫は考えた。
全く、これで戦勝祝いなどとよく言えたものだ。首相は内心苦笑した。
一刻押し黙り、そして首相は再び吉岡を見上げた。薄暗い照明の中ではわかりにくいが、身体に対して少し白んだ色をした顔をした吉岡は、黙って首相を見ている。
「私からの更迭は致しません。その代り、臼杵並びに長倉両氏には本件の始末について、責任を自ら取ってもらいます」
「責任を自分で? それはまた何を?」
円卓の向こう側にいる千々石リカルドから声がかかった。彼は成り行きを詰まらなそうに見て、少し飽きたような顔をしていた。
「軍の将官なんですから、どう責任を取ったらよいか言わずともわかるでしょう」
首相はリカルドに視線を向けなかった。
「美談に仕立てるつもりか」
鹿子木武時は苛立った声でつぶやいたが、首相は鹿子木の方をしっかり向いていた。
「三ケタを悠に超す死者が出た責任を取る事がどうして美談になるのです、鹿子木師団長?」
「古来、兵を失った責任の取り方って言うのは、大抵慰撫の為の前芝居。総大将がさっぱり首を打ち落とさないでいるのはそういう意図があるからだろう」