爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第7章 山口 最期の日
大尉は声に反応しなかった。首相はペンで執務机を二回ずつ叩き、大尉は強めに叩いた四回目に漸(ようや)く気が付いた。
ハッとしたように振り返る。
「ああ、すいません」
「考え事中のシカトはアウトよ、夏希」
首相の表情を見、大尉は態度を揺り戻した。
「はーい」
やれやれ首相は適当な返事に肩を落とした。本当にいい加減で、分かり難い女だ。
「長い付き合いでしょうに」
「お頭は指示名詞がないんよ」
「この部屋誰か他にいるの?」
「……いや、居ないんだけど」
大尉はスッと吸い込んで灰皿に煙草を押し付けた。そしてもう一本を取り出して口に咥えた。
「吸い過ぎ。さっきから何本やってる?」
「まだ2本」
「もう3本」
えっ、と首相の指摘に夏希は思わず声を出した。箱の中身を確認し小声で本数を数える。その姿をつまらなそうに見る主人に、大尉は苦い顔を向けた。
「気持ち悪い。一々数えてんのね」
「失敬な。部下の健康管理は上司の務めです」
「私からすりゃ、煙草は医薬品です」
「そんな蓮池家の家庭の医学知りません。肺癌催す医薬品があるか。全く変な理屈まで持ち出すなんて、これだから薬中は」
大尉は咥えた煙草を指に挟んで口から離し、ムスっとした表情を向けて来た。
「我が家は我が家です。そんな事より自分の腹周り気にしたらどうですか、元芸人」
カチン、と来た。首相は少し眉を上げた。
「ああ、そう。今日から全職員禁煙決定ね。今決めたわ」
「宜しい、ならば挙兵する」
「何!? なんて理由なのよ…」
「煙草は生命線だ。奪うなんて有り得ない。生存権の侵害だよ」
「恐ろしや。うかうか禁煙なんて言えないわね」
「そもそも気が狂ってる。皆リスクは知ってるんだ。その上でヤニ狂いになってんだから、一々止めるな。お節介なんだよ」
「周りが迷惑じゃない」
「隔離場所すら奪っておいて迷惑も何もあるか」
「喫煙者とそれ以外の」
「社会弱者保護を訴えた貴方がマイノリティ理由にするのは本末転倒ってヤツだ」
「ぬぅ。言いよるな……このぅ」
「百年早いわ」
首相の顔を見て大尉は得意げな表情になった。だが、大尉は煙草を箱へ戻した。どうやらその気が失せたようだ。
やり取りの後に間が空いた。すると今度は大尉が切り出した。